干潟ベントスフィールド図鑑

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今日は新刊の図鑑が届きました。

干潟ベントスフィールド図鑑
出版:日本国際湿地保全連合

著者
鈴木孝男(東北大学大学院生命科学研究科)
木村昭一(三重大学生物資源学部)
木村妙子(三重大学大学院生物資源学研究科)
森 敬介(国立水俣病総合研究センター)
多留聖典(東邦大学理学部東京湾生態系センター)

261ページ。
価格:1680円

各地の干潟調査で活躍されている研究者の方々が執筆され、日本国際湿地保全連合によって出版された図鑑です。
干潟で見られるベントスを網羅的に扱った図鑑はこれまであまりなかったわけで、干潟で生き物の名前を調べるのも大変でしたが、この図鑑は貝やカニだけではなく、ゴカイやヨコエビなども含め、492種類とかなり多くのベントスが掲載されているのが特徴です。

昨年「干潟の絶滅危惧動物図鑑」が出版され、干潟のベントスについて得られる最新の情報がかなり増えたわけですが、しかし掲載されているのが絶滅危惧種だけで、干潟で普通に見かける種類が載っていないという点で干潟の調査や観察会で使うには困った部分もありました。

この図鑑はそうした普通種もきっちり掲載されているので、干潟の絶滅危惧動物図鑑を補うような最新のベントス図鑑でもありますね。
ハンドブックサイズで、フィールドに持っていくにも良いサイズで、そのあたりはよく考えられています。
それぞれの種について写真と解説とがついていて、本当はもう少し詳しい解説があれば嬉しいのですが、コンパクトサイズでこれだけの種数を掲載するのは大変だったと思います。参考になると思います。

個人的に、この図鑑の中で一番役に立ちそうだと思ったのは、アナジャコ類の識別点でした。これは調べてみる価値があります。

Amazon、鳥羽水族館(ネットショップ)、大阪市立自然史博物館ミュージアムショップ(オンラインショップ)で購入することができるそうです。

posted by magokorogai at 21:04Comment(0)本棚

兵庫の自然力

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新刊です。

兵庫県生物学会編「ゆたかな兵庫の自然力 -生物の多様性と人々の営み-」
神戸新聞総合出版センター 定価2000円
http://ec.kobe-np.co.jp/syuppan/html/

兵庫県の日本海沿岸から山地、平野部、神戸の都市部、そして淡路島まで、地理的にも非常に多様な環境を持つ兵庫県の環境と生物を余すところ無く紹介したというような内容です。オールカラーでなかなかすごいと思います。
とにかく、生き物の名前と写真がたくさん掲載されていて、著者の方々が本当に生き物好きで、これも知って欲しいあれも知って欲しいとたくさん盛り込んで書いたというような生き物や自然環境への想いがよく分かります。

この本のよいところは、コウノトリを全く前面には出しておらず、その名前はほんのちょっとしか出てこないこと。
兵庫県といえば、自然関係では丹波竜と豊岡のコウノトリばかり注目されてしまい、マスコミも行政も、そして一般の関心もそちらばかりに向き、コウノトリには膨大なお金と時間と人がかけられていますが、逆に言えばそれ以外の生物や他の地域で地道な自然保護活動をしている方々にはまったく何の手も差し伸べられずにほったらかし、というのが兵庫県ではないでしょうか。

自然環境全体の保全が、一部の(目立つ、可愛い)生物の保護にすりかえられてしまう、というのは各地でいろいろな問題が起きていますね。そんなときに多用される言葉が「生物多様性」だったりするんですが、しかしそれは果たして生物多様性なんだろうか。トキやコウノトリだって、そうした例のひとつだと私は思います。

この本では、様々な環境があってそこに様々な生物が棲んでいる、地理的にここを特徴付けるのはこんな種だという地域性、そしてこの種は生息環境的にこういう限られたところにしかいないという固有性や希少性、そういった大切なことが理解できる内容ではないかなと思います。兵庫県のそれぞれの地域の保全に結び付けられるようなものを地元の生物学会が本として出版するというのはうれしいことですね。


そして表紙からいきなりウミヒメカノコ生貝の写真が載っていて、驚愕です。ウミヒメカノコの生貝が印刷物として出されるのはこれが初めてではないでしょうか。
よく一緒に調査をしている方が貝類のことを執筆されているのですが、干潟や沿岸域に棲む貴重な貝類(しかもほとんど生貝)がたくさん掲載されていて、見る人が見れば驚愕な内容となっています。
カクメイ科の産卵シーンとか(笑)

調査や研究というものは、地域や自然環境の保全に結びついていくものでなければならないと、私はいつも思います。そういう意味でこの本で、貝類についてこれまでの地道にされてきた調査の成果をひとつまとめられたことはすごく良かったなぁと思います。

写真も多くて、読みやすいので、ぜひたくさんの方に読んでもらいたい本です。
神戸三宮のジュンク堂書店や大阪の丸善ジュンク堂書店では新刊のコーナーで売っていました。


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九州発が良い!

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出版されたばかりの出来立てホヤホヤの新刊が届きました。

「九州発 食べる地魚図鑑」

著:大富 潤
出版:南方新社
定価:3800円

九州近海を中心に、食卓に上がることも多い身近なお魚から、あまり目にしない少し珍しい魚介類まで、たくさんの海の幸が、それぞれにかんたんな識別点と調理方法を添えて解説されています。
とにかく、魚料理の写真がたーくさん出てきます。そして調理の基本や簡単なレシピなども紹介されています。
まさに魚を食べるための図鑑といった感じです。それぞれの魚介類の入手容易度と著者による味レベルも載っていて面白いです。

九州ですから、有明海の独特の魚介類や伝統漁法などについても写真入りで解説されています。私が柳川で店頭でテングニシの殻が欲しいために衝動買いして食べた鮮魚店も出てきて、思わず笑ってしまいました。

今までに無いような図鑑で、とてもユニークです。私も魚をさばいたりなんて、普段ぜんぜん出来ないのですが、やってみようかなーって思ってしまいました。

私が一番食べてみたいなーと思ったのが、ナミノコガイの貝飯。うーんこれは美味そうだなぁ。砂浜に行って、自分でナミノコガイを採ってきてさ、食べてみたいなぁ。

なにより、九州発!というのが良いですね。南方新社さんはこれまでも宮崎の三浦知之さんの「干潟の生き物図鑑」をはじめ、干潟や川の生き物を扱った図鑑を幾つも出版されていますし、植物や昆虫など自然関係の図鑑や書籍、環境問題や原発に警告を鳴らす書籍も数多く出されています。すごく信念を持って本を作られているお気に入りの出版社さんです。
東京とか中央の出版社ではなく、こうした地方の出版社から出される本にはたくさんの大切なことが詰まっているのではないかと常日頃思うのですが、今後も素晴らしい本を出されて、それが地方からの力となって大きく発信されていくことを私は応援したいです。


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